弁護士
被災者にとって「復興事業」「復興まちづくり」とは人生の再構築と同様に非常に大変なエネルギーを要する活動であると思います。その為、自治体にお任せしたい、という気持ちにもなると思いますが、それが必ずしも自分たちが思い描いていた復興と同じものとは限りません。復興の真の目的は「人間の復興」です。そのために、被災者のみなさんは、協力して自分で考えて、方向性を見出して、その実現に努力しなければなりません。そのような大変な事業を前にしても、日常のさまざまな法的問題、債務の問題、相続の問題、近隣との解決しなければならない問題などは自然に解消されているものではなく、それらも一緒に解決してゆかなければなりません。弁護士として平常時にみなさんの困りごとを解決しているのと同様に、被災者のみなさんの災害からの復興の過程でも問題となる法的諸問題について一緒に解決して行きたいと思います。また、復興事業における制度などは法的な用語や技術的な用語が多く、通常、理解しづらいこともあります。そのような問題によって、被災者のみなさん自身が復興問題に取り組もうとする気持ちが萎えてしまうこともあります。そのような問題についても。弁護士としてまちづくりに関する諸法規や事業について理解をしている者がサポートして、被災者のみなさんに寄り添って復興まちづくりの協議をすすめるお手伝いをしたいと思います。
中野明安 弁護士
建築家
建築家は建物の設計やまちづくりにかかわる仕事をします。人々が安心して暮らせる安全で快適な環境をつくりたいと願っています。災害時には建物の被害調査、被災者からの相談などを通して、復興支援活動を行ってきました。
災害は、前触れもなく突然襲ってきます。日常生活は瞬時に壊され,非日常化してしまいます。日常生活は、様々な問題に折り合いをつけ微妙なバランスの上で成り立っていますが、災害はこうした潜在していた問題を一挙に顕在化させてしまいます。人々は生活の場である「住まいやまち」を失い、見通しの立たない不安な日々を送ることになるのです。災害の状況は一つとして同じものはなく実に個性的です。それゆえ災害に対応するには、未来を見据えて創造的に取り組む必要があります。
建築家は、日常の業務を通じて、目に見える「具体的なかたち」として「住まいやまち」を提案しますが、その過程では様々な状況を読み解き、多くの対立する考えや意見を受け止め、最終的に合意を取り付ける作業を行います。
この日常的実作業で積み重ねている経験は、非日常化した状況から日常生活を取り戻す作業に活かせると考えています。被災された方々のニーズをお聞きして、それぞれの状況に応じた個別解を見出すお手伝いをして、一日も早い生活の場の再建に役立ちたいと考えています。
中田準一 建築士
土地区画整理士
被災市街地復興土地区画整理事業は、関東大震災を始めとし、阪神淡路大震災、そして東日本大震災など幾多の復興事業として行われてきた実績を有しています。土地区画整理事業は、面的総合的な都市基盤整備事業として、これまで概ね行政主導による事業であるといえます。しかし、阪神大震災の都市計画決定などにおいて、地元地権者との軋轢を招くなどの支障をきたしている場合があります。東日本大震災の事業化においても、行政側による委託業務として地元との意見交換及び合意形成を前提とした復興土地区画整理の事業化を進める事例となっています。
今後の復興事業を進めるにあたっては、区画整理事業の特徴である、基盤整備による安全・安心市街地形成を前提とした整備の必要性が重要な視点ではありますが、当地に住み続ける地元住民の意向こそが最も重要な復興要因であると考えられます。従って、地元住民側に立った意見の集約を図りつつ、復興まちづくりの方向性を導き出すことが重要であると考えられるのです。土地区画整理事業は、行政ましてや一般住民においても、経験することの少ない分かりづらい事業であることから、きめ細かな支援体制が必要であると考えられます。専門家としての土地区画整理士の役割は、行政からの制度・情報等の提供及び調整等を図りつつ、地元住民に寄り添った、きめ細かな復興まちづくりでのお手伝いが出来ればと考えています。
栗田和夫 土地区画整理士
技術士
3.11東日本大震災における原発災害について、科学技術者は専門分野相互のチェックが甘く「特殊な素人」といわれました。その反省の上にたって、技術士は総合的な視点に立って、市民の意見を聴きながら、復興に努めています。
江戸城天守閣は、明暦の大火(1657年)により焼失しましたが、当時将軍輔佐役であった会津藩主保科正之(江戸城外の神田の生まれ)が、「被災した人たちの救済と江戸の街の再建が先である」として、再建されずに今日に至っています。このことは、次のようなことを物語っています。①地域の実情に通じていなければならない。②不要不急のものは後回しにする。③危機管理にあたっては、リーダーシップに欠ける場合があり、そのときはフォロァーが補佐して迅速に意思決定する。
今後発生が予想される南海トラフ巨大地震等の大災害を乗り越えていくためには、イノベーション(革新)が必要です。プロダクト・イノベーションとしては技術革新(例:地震予知)があり、プロセス・イノベーションとしては、市民自治(例:分権国家)があります。イノベーションの成果を具体的に社会に活かして行く必要があります。
技術士は、現場で、市民と対等の立場に立って意見交換し、イノベーションの成果を活かして、フォロァーとして、総合的に調整する「災害コーディネーター」を目指して、防災活動を行っています。
旭 勝臣 技術士
中小企業診断士
大きな災害は、その地域に住む人々の生活を根底から破壊してしまいます。単に住むところだけではなく、地域コミュニティや収入の糧などそれまで営々として築きあげてきたものが一瞬にして崩壊してしまいます。
災害復興という、地域の方々がおよそ経験したことのない活動を細かく切り分けていくと、発災直後はまず自分や家族の命を守ることが最優先で、その次は避難所などに身を寄せながら将来を案じ、新たなまちのグランドデザインのもと住宅再建に着手し、自営業の方であれば事業を再建していくという様々な段階が存在します。「生活再建」と一口にいってもこのような段階があり、一個人、一家族、一企業だけで短期間にこなしていける内容ではありません。
それら各々の復興段階において被災者の皆様のお役に立とうというのが災害総合支援機構の役割であり、中小企業診断士はその職能を活かして産業復興という観点から復興のお手伝いをいたします。産業復興とは、それまでの町工場や商店の再開だけではなく、新たな街作りに応じた新たな商売の立ち上げを含むものであり、その街に住む方々全員の生活が豊かなものになるようにと行うものです。
しかし、産業復興には複雑な条件や多様な規制や煩雑な補助金制度がつきものです。これらの複雑さや面倒さをていねいに解きほぐし、復興を望む皆様方にわかりやすくお伝えし、皆様方それぞれの状況に対応した復興のお手伝いをしたいと考えております。
藤田千晴 中小企業診断士
不動産鑑定士
最近の地震災害を振り返って見ますと
1995年1月 阪神・淡路大震災:都市型災害の典型でした。
2000年10月 鳥取県西部地震
2004年10月 新潟県中越地震:山古志村など中間山地(過疎地)災害の典型でした。
2005年3月 福岡県西方沖地震:玄海島が被災。
2007年3月 能登半島沖地震:石川県輪島市の市街地中心部が被災。
2007年7月 新潟県中越沖地震:海岸の地方都市災害、液状化など。
2008年6月 岩手・宮城内陸地震:火山帯山地災害、山崩れ、土石流、土砂ダム。
2011年3月 東日本大震災:地震、津波、原発被害の3重災害となった。
発災により、鉄道・道路・上下水道・電気・病院などのインフラ、住家が被災して、1人1人の日常生活と地域コミュニティが破壊されてしまいました。災害に関わるまちづくりは、事後復興町づくりと事前復興町づくりに区分されます。事前復興町づくりとは、被災した町の姿を想定して、平時において災害のそなえをしておくことです。
不動産鑑定士は、公示価格・都道府県地価調査・路線価などの公的な土地の評価を中心に、土地建物の売買・賃貸・相続・活用・補償などの不動産全般に関わる分野でも活動しています。また、一般市民を対象とした相談会を開催し、不動産全般にわたる相談に応じてきました。不動産に関わる専門家として不動産鑑定士が、事後・事前における不動産の所有と利用の在り方など、一人一人の生活再建と地域コミュニティの復興のためにお役に立ちたいと思います。
炭野忠彦 不動産鑑定士
マンション管理士
全国にマンションはおおよそ610万戸あります。全人口の15%強の人々がマンション住まいと言えます。マンション管理士はこのマンションの建物の維持管理と良好な住環境確保の支援を行っております。
建物についての災害対応と言えば、耐震診断と耐震改修工事促進が一番に上げられます。特に建築年が昭和56年5月以前の旧耐震マンションについては、改修促進に向けて積極的な相談を行っております。
東日本大震災において、仙台市では行政に依り全壊判定された110件を超すマンションのうち実際に取り壊したのは5件でした。取壊し決議に当たってマンション管理士が関わった案件は良かったのですが、関与できなかったマンションではその手続き違反について訴訟となっております。
マンションは共用部分と専有部分と土地で構成されています。災害に関する支援金等はその殆どがそこで生活する個人(専有部分)への支給となります。しかし、マンション被害の殆どは共用部分である建物部分にあります。建物の躯体部分は全て共用部分であることを考慮する時にマンション管理組合への直接の支援は看過されているのが実状と言えます。
元々、大災害を想定していない区分所有法に定められたマンションでの建物取壊し或は土地の処分は、関連法によって限定的にしか認められていないことに留意する必要があります。マンション管理士は、こうした場合の合意形成に向けて組合への支援を行います。
東日本大震災時に建物と生活復興のために宮城県マンション管理士会が行ったことは、
① 震災対策相談電話の設置
② 被災マンションへの「マンション管理士無料派遣」
③ 個別マンション管理組合での相談対応
④ 震災お役立情報の発表
⑤ 情報・記録の取り纏め
等がありました。
木村孝 マンション管理士